倒せ、奴を!

 どうも、下手な考え休むに似たりは変態カンガルー休んでニヤリに似てると思う男3’sです。
 今回はちょっと久し振りにテレビで見たので考えます。
 アンパンマンを倒す方法を!
 そう、バイキンマンは何十年にも渡りアンパンマンと戦いと繰り広げ、全敗(多分)。そう、倒せないのです。奴を。食物
人間たる、アンパンマンを!
 この男の戦力を分析して見ると、まずはアンパンチ。こいつはほぼ高い確立で対象を破壊、吹き飛ばします。バイキ
ンUFOの重量を車と同じ約1Tとすると、それを大気圏外まで吹き飛ばすのですから(光ってるからそうでしょう)その威
力たるや超越者レベルと言えます。
 次に飛翔能力。ここからアンパンチを繰り出すのだから、瞬間的にでもかなりの速度が引き出されるものと思いま
す。単純にUFOに乗る必要があるバイキンマンに比べると飛べるだけで極めて有利でしょう。彼にも羽はあるのです
が、飛ぶと言うより浮く程度ですからね。
 そして次は、味方。多過ぎて全貌が把握出来ません。代表的なのはカレーパンマン、食パンマン、メロンパンナ等の
同人種、パン工場の後方支援部隊、そして登場するや否や味方となってしまう単純な輩。ほぼ毎週、こいつらの強力な
支援があります。愛と勇気だけが友達と言うのは伊達ではないようです。
 それに対して弱点ですが、まず、頭部たるアンパンにダメージを食らうとその戦力は大きく低下します。多くの場合飛
翔能力が奪われ、パワーも奪われます。塗れる、汚れる、欠ける、凍る、汚染されるなどがそのダメージに当たります。
しかし、この頭部は取り換えが可能。弱体化させてもすぐさま回復します。どうやら本体は身体の方ですね。しかしこの
本体の正体に関しては未だ不明。出来ればこちらをマシンガンでボロボロにしたいところですが、どんな攻撃を受けて
もこの本体だけは無事である事を考えるとその耐久力たるや尋常ではないようです。どうやら、破壊は無理ですね。…
…弱点なのか……?
 次にあのマントです。アンパンマンの飛翔能力はあのマントによって生み出されているのであって、アンパンマン自身
のものではありません。このマントを使えない状態にする事が出来れば、飛翔能力を失ったアンパンマンは空中のバイ
キンマンに対して手も足も出なくなります。しかしマントなので修復も容易で、量産さえされているようなので、その効果
は一時的なものと言わざるを得ません。どうやって浮力を得ているのか、そのメカニズムさえ解明出来れば、そこを突く
事が出来るのですが……。我無力を悔やむばかりです。
 そして今のところ見当たる弱点はこの程度です。能力に対して弱点が少なく、援軍と言う点を考えるとその戦力は軽く
アメリカ全戦力を凌駕するのではないのでしょうか。っていうか絶対してます。

 それに対してバイキンマンの戦力は科学力、です。
 半重力によって飛行していると思われる高性能UFO。量産型汚染生物兵器、カビルンルン。……これだけ?
 味方にはドキンちゃん、ホネホネマン、バイキン大王(だった?)くらいです。しかしドキンちゃんは敵兵食パンマンにぞ
っこんであるため時折裏切り、更には戦力にもならないためすぐにでも処刑。それに対しホネホネマンはドキンちゃん
にぞっこんであるためその裏切り行為に手を貸す恐れがあるためすぐにでも処刑。バイキン大王(だったかなあ)は出
番が殆ど無いため、戦力としては期待出来ません。結局バイキンマンただ独りでアンパンマンとその援軍を相手にする
必要がありそうです。
 UFO自体は非戦闘員を圧倒する戦闘能力を持っていますが、戦闘員たるパン人間には適いません。

 まず、最も有効だと思われるカビルンルンを使用します。空中から風に乗せ散布すればアンパンマンさえ高い確率で
撃破出来るはずです。また、他の食物型生物に対しても効果があるため強力と言えます。
 しかしここでバタ子さん登場、新しい頭部を供給され、再起動したアンパンマンは元気100倍となり、強化されます。
これはおそらく頭部が新しいものとなり汚れが無いため、その実力が最大限まで発揮出来るからでしょう。そのうちカビ
ルンルンも底を着き、パンチ被弾。売買禁。
 ここで重要なのはバタ子さん及びパン工場の人間でしょう。カビルンルンが効果無く(長時間散布すれば肺結核を引
き起こす事は可能でしょうが、アンパンマンはそこまで甘くありません)、唯一の弱点である頭部を量産されては手の打
ち様が有りません。加えて、アンパンマンは雨天時、ヘルメットを被る事によって濡れや汚染から身を守るためいつでも
効果を発揮するわけではないようです。常時これを備えているわけではありませんが、可能性は0ではありません。極
めて不利です。
 
 それを踏まえて再び戦闘開始。パン工場を叩きます。どうやらこの世界ではパンを作れるのはこの工場だけのよう
で、ここを叩けばアンパンマンの生命線を断つ事が出来ます。少なくともマントの生産だけでも断つ事が出来ればアン
パンマンの戦力を大きく低下させる事が出来るはずです。アンパンマンが常駐していますが、これはカビルンルンで何
とかしましょう。
 まずはカビルンルンを散布。アンパンマンがヘルメットを取る時間を稼ぎます。その間に施設内に侵入し、破壊しま
す。バイキンマンの技術力を持ってすればダイナマイトのひとつやふたつは確実に製造が可能であるため、これを設置
しましょう。
 散布、侵入、爆薬設置、この間はおよそ1分。遅延信管で爆破すれば、あとは一時撤退、形成を立て直しアンパンマ
ンを倒すだけです。子供をひとり誘拐し、誘き出せばヘルメットを用意する余裕など無いでしょう。再びカビルンルンに
よる攻撃、または放水攻撃で倒せば良いのです。
 と、そこへ現れたのはアンパンマン号。強力な攻撃に耐ええる事は既に実証済み。再びこちらの戦力は底を着き、パ
ンチ被弾。売買禁。
 ここで重要なのはパン工場が無くともパンの生産は可能だと言う事。ジャムおじさん及びバタ子さんの殺害が必要な
のですが、これはアンパンマンを倒さねばまず無理。また近年はメロンパンナもこのパン工場に居ついているため脅威
は2倍。容易ではありません。
 良い事を思い付きました。UFOから出てくる砲身からは砲弾が連射可能なのです。そう、砲弾です。画面で確認する
限り大きさはおよそアンパンマンの拳大。アンパンマンはおそらく成人男性程度の体格の持ち主なのでおよそ直径10
センチ。これを連射出来るのだから、少しばかり威力を上げても連射能力を落とす程度で済むのではないでしょうか。

 戦闘開始。パン工場からおよそ10キロ。UFOを空中で停止させます。そして砲身に装弾されしはモンローロケット
弾。地下のアンパンマン号を埋め、使えないようにします。遥か遠くの叫び声を聞き分けるアンパンマンの聴力は桁外
れですが、もう遅いです。来たところでカビルンルンによる大気汚染と放水攻撃による頭部侵食が十分可能。そして
今、遂に残されたたったひとつの頭部を破壊、アンパンマンに勝利です。
 と、そこへ食パンマンが登場。バタ子さんよろしく頭部を投げつけます。そう、食パンマンはパン工場のパン運搬委
員。つまり奴の乗るトラックにはストックが残され……、忘れてた。パンチ被弾。売買禁。
 ここで重要なのはパンが製造出来るのはパン工場だけであるのは別として、パン自体はあちこちに存在すると言う
事。流石のカビルンルンも世界中のパンを一度に腐敗させる事は出来る訳が無く、寄せ集めながらも頭部を製造する
事は可能なのです。世界中からパンを……、食物を……!
 次の攻撃目標が決まりました。

 作戦開始。戦闘ではありません、作戦です。
 アンパンマンらはなぜかバイキンマンの本拠地に攻め入る事は無く、常に後手後手に回っています。
 これらを踏まえ、今度の攻撃目標、それは、小麦畑です。カビルンルンでありとあらゆる麦畑を腐敗させ、貯蔵された
ものも全て腐敗させます。カビルンルンは作戦中に底をつかないよう、事前に大量生産しておきます。畑は川や湖を汚
染すれば一気に攻撃出来るためそれほど苦労しないはずですし、カビルンルンを使えばそうやすやすとパン人間も手
を出せないでしょう。貯蔵施設は先程の長距離砲撃で焼き払っても良いですね。
 次第に締め付け、余裕を無くす。パン人間の頭は中身や、外装も何かしら代用された事はありますがいずれも麦は
不可欠であるため、どうしようもありません。

 世界は恐慌し、アンパンマンは何をやっていると言う民衆の怒号。世界的なヒステリー。
 そして遂にパン人間らはその賞味期限が切れ、代わりが無いならばそれまで。もちろん、バイキンマンの技術により
製造された無人偵察機が食物の流れを監視し、イレギュラーがあれば遠距離からのミサイル散布によるカビルンルン
がそれを補う。パン人間が戦闘不能になったのならばジャムおじさん、バタ子さんには死んでいただき、パン人間頭部
の製造方法は闇に葬る。本体であろう身体部分は低温でも活動可能なカビルンルンを満たした冷凍カプセルに収容
し、太陽へ向け射出。
 完璧だ。
 
 バイキンマン。奴らに勝ちたいならまず畑を攻めろ!
 全てはそこからだ。後はお前に任せるぜ。グッドラック!

 周囲は壊滅的な状態だった。生きているものなどいるのか、誰にも分からない。
 そしてその廃墟の中心にはふたつの影があった。
「バイキンマン……、お前の……、お前の目的はなんなんだ」
 アンパンマンは血の吹き出す脇腹を片手で抑えながら切れ切れに言葉を紡ぐ。
「目的ぃ?」
 銃口が揺れる。
 バイキンマンは不適に笑い、紫色の唇は卑屈に歪んだ。そこから吐き出される腐敗臭は、彼がまともな存在で無い事
を示していた。
「そんなもん知らねぇよ。俺はやりてぇ事やってるだけだぜェ?」
 頭部から突き出る2本の触覚、背部から生える昆蟲のような透明な羽。悪魔を思わせる姿だ。
「殺すも、壊すも俺の勝手だ。そうだろぉ? それをテメェらが勝手に悪ぃ事だって決め付けてるだけじゃねぇか。気に
いらねぇんだよ、そういうのはよ」
 アンパンマンは食道に溜まる血を自ら吐き出し、立ち上がる。
「そうやって、お前は生きてきたのか……」
 愚かな。アンパンマンは歯を食い縛る。
「あぁ。そうだ。俺はそうやって生きてきたのさ」
 バイキンマンは悪びれる様子も無く銃を持つ諸手を広げ、己の優越を誇示した。
 ふたりの能力を比較すればアンパンマンが圧倒的に優れているが、カビルンルンによる大気汚染と、それを回避しよ
うとした隙を突いた弾丸が腹部を貫いたのだ。意識を保っているだけで精一杯の半死半生状態と言える。
「可哀想なやつだ……」
「あぁ?」
「お前はあまりにも孤独だ。常に心が満たされず、満たすため衝動に突き動かされるまま殺戮を繰り返す。しかし、満
たされないままお前は何度も……何度も……」
 アンパンマンは再び吐血する。そしてその血には白いものが混じりこんでいた。カビルンルンが肺にまで汚染の触手
を伸ばしているのだ。
「……気にいらねぇなあ……。俺はそういう奴はみんな殺してきたぜ。殺せなかったのは、オメェだけだ。アンパンマン」
 ここで初めてバイキンマンは顔を顰める。
「お前を殺す。バイキンマン。俺がお前にしてやれる事は……それだけだ」
 力の入らない拳を握る。その頬に流れるのは……涙。
「殺せ! 俺を殺してみろアンパンマン! 俺を殺してみろ!」
 バイキンマンは叫び、銃口をアンパンマンの額に向ける。そしてその頬にはやはり涙が流れていた。
 これが最後だ。
 憎み合い、殺し合いながら未だ決着のつく事の無かった戦い。しかし、これから行なわれるのは殺すか殺されるかで
はない。互いに死を背負い、ただ自らの持つ意志の戦いなのだ。

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